2016.05.18

Posted by

Nao Tokui

Ambisonics360 Microphone — 360度動画のためのサラウンド・マイクロフォン

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既存の動画体験を超える

あたかも本当にその場にいるかのような没入感を感じられるような360度全天周動画(以下、360度動画)を撮影するにはどうしたらよいでしょうか。誰しもが考え付くのが映像の解像度を上げることでしょう。もしそれができないとしたら…

360度動画を視聴した時の最初の印象は「のっぺり」しているなというものでした。その理由のひとつはその「音」にあるように感じました。視点は自由に動かせるのに対して、視点の変化に対して音像はまったく変化しない、画面に見えている音源も背後にある音源も同一に扱われている…

3Dゲームでは当たり前になった立体音響のように、視点の方向に対応して音像が変化する、音が聞こえて来る方向を向くと、音源の正体が見える、というふうにできないか… そんなことを考えて、360度動画用に360度の周囲の音を記録するマルチチャンネル・サラウンドマイクと、再生用の専用動画プレイヤーを開発しました。

このマイクは、正四面体の各頂点方向を向いた4つの指向性マイクから構成されます。動画の撮影と同時に、この4チャンネルの音をそれぞれ独立してポータブルレコーダーで録音。再生時には、視点方向の情報から、4チャンネルの音をミックスすることでヘッドホンで再生されるべき2チャンネルの音を再合成しています(今回開発した専用プレイヤーの利用が必須)。


埋もれていた技術をもう一度

この仕組みは、1970年代に確立されたサラウンド音響の技術、Ambisonicsの考え方に基づいています。5.1チャンネルなどの一般的なサラウンドのフォーマットとは異なり、Ambisonicsのサラウンド音源は再生するスピーカーの位置に依存しません。再生環境に合わせて、録音された音から再生される音が再合成される点に優位性があるのですが、技術的制約と市場の需要の薄さから、日の目をみることなく埋もれてしまいました。

Oculus Riftの登場などによってVR技術に注目が集まる昨今ですが、話題の多くは視覚表現に集中しています。今回の試みは、Ambisonicsのような古い技術を掘り起こすことで、視覚偏重の陰で忘れ去られがちな聴覚に光を当てるというチャレンジでもあります。

自分が生まれ育った街の雑踏のざわめき、通った学校のチャイム、お寺の鐘の音。懐かしい音によって記憶を喚起されたという経験は誰しもが体験しているはず。360度で映像が撮れるからこそ、見えないものの気配を感じるためのシステムをサラウンド・マイクというかたちで提案しました。

「百聞は一見に如かず」の一方で、実は「百見は一聞に如かず」もまた真なのではないでしょうか。

例えば収録時、犬が吠え、その反対側で車が走っている環境にいたとしたら…

Ambisonics360 Microphoneを用い映像と音声を同時に録音して取り込み、ヘッドマウントディスプレイや専用プレイヤーで再生すると、前方に犬が見えている場合には前方から犬の声が、ブーンと車の走る音が後方からして視点を移すと、そこには車が。

RICOH THETAに取り付けたガジェットには、4方向を向くマイクが仕込まれています。
レコーダーで4トラックを同時に録音し、今回開発した専用プレイヤーで再生すると、それぞれをミックスし視点に準じた音が再合成され再生されます。

正四面体の各頂点方向になるべくコンパクトに単一指向性マイクをまとめるため、西本桃子が3Dプリンタなどを用いガジェット部分を設計・製作。RICOH THETAの上部に装着できるよう固定する部分も、公開されている3Dデータを用いて自作
回路やアンプまでAmbisonics360 Microphoneに適するものをテストし、組み上げた。屋外で使用する場合は風の吹かれに弱い特性があり、ウィンドスクリーンもこのマイクに合わせて製作


本プロジェクトは、RICOH THETAデベロッパーズコンテスト ガジェット部門賞を受賞しました。


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CREDITS

  • Concept / Software

    Nao Tokui (Qosmo, Inc.)

  • Project Management

    Miyu Hosoi (Qosmo, Inc.)

  • Product

    Momoko Nishimoto

  • Movie Direction

    Takafumi Asaka

  • Illustration

    Shoko Mitsuma

  • Special Thanks

    Shin

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