日本科学未来館の2025年4月公開の新規常設展示「未読の宇宙」内の「AIと語る宇宙」のシステム開発とデザインを担当しました。
「未読の宇宙」は、巨大な観測・実験装置を駆使して、研究者たちがどのように宇宙を読み解こうとしているかを体感できる展示です。想像をはるかに超える壮大かつ緻密な研究の営みに驚きを感じると同時に、それでもなお“読み尽くせない”宇宙の魅力に触れることができるものです。
本常設展示内の「AIと語る宇宙」は、個性豊かな複数のAIキャラクターとの対話を通して、宇宙に関する疑問や日常的な話題について楽しく思考を深めていける、体験型の対話コンテンツです。宇宙への好奇心を引き出す対話体験を目指し、AIシステムの設計・開発から、AIキャラクターのデザイン、操作用iPadや対話画面のUIデザインまで、一貫して手掛けました。
体験者自身の自発性を喚起するため、AI同士の会話に加わるかたちのシステムとデザインを設計しています。現在一般的になりつつあるAIとの一方的な質疑応答ではなく、それぞれの関心や視点を持ち寄って宇宙の謎に向き合い、深く掘り下げられる場を目指すことが、本コンテンツの出発点でした。
日本科学未来館「未読の宇宙」 / 展示制作(株)トータルメディア開発研究所 (Photo:Jingu Ooki)
System
システム面では、LLM(大規模言語モデル)を活用したリアルタイム対話エンジンを構築しています。ハルシネーションを抑え正確な文章を生成するためのRAGシステムの実装や、AIキャラクターの個性を引き出すペルソナ設計、対話の流れのデザインを通して、魅力的な対話体験の構築を目指しました。従来の自然言語処理技術も併用することで、難しい漢字をひらがなに開いて表記するモードやキャラクターの音声エフェクトも実装しています。また、視覚障害のある方に向けて対話を読み上げるモードもサポートし、より多くの方に楽しんでいただけるようアクセシビリティに配慮したシステム設計を行いました。
Design
デザイン面では、「AIとの会話」に物語性を持たせるため、7体のAIキャラクターと、対話を円滑にするUIを一貫したストーリー設計で構築しています。各キャラクターには科学者・子ども・吟遊詩人・おばあちゃん・聞き上手な美容師など多様なペルソナを付与し、視点や語り口の違いによって対話にバリエーションを生み出しています。
7体のAIキャラクター
AIキャラクターデザインは展示空間に馴染みつつ目を引くよう、幾何学図形のみで構成したミニマルなフォルムを採用しています。このAIキャラクターは言わばAIそのものの擬人化と定義し、「AIが考える各キャラクターのビジュアル」を取り入れるため、デザインの起点に画像生成AIを活用しました。
キャラクター制作プロセス
各キャラクターの性格をキーワードにしたテキストプロンプトを入力し、抽象的な幾何学イメージを生成。そのイメージを基に形状を抽出しデザインへ落とし込んでいます。
インターフェイス設計においては、キャラクターのソリッドなシルエットに合わせて全体をシャープに統一しました。「AIとの会話」が途切れないよう、視認性と操作性を重視したレイアウトを採用することで、誰でも直感的に使え、自然とAIに話しかけたくなるUIデザインを実現しました。
視認性と操作性を重視したレイアウト
Links
- Wired Japan - テーマは「宇宙」と「量子コンピューター」:日本科学未来館でスタートした2つの新展示 - Qosmo Insights #6: 「未読の宇宙」展示制作の舞台裏
Exhibition
Credits
Exhibition Design & Fabrication: TOTAL MEDIA DEVELOPMENT INSTITUTE CO., LTD. Planning & Production: Miraikan - The National Museum of Emerging Science and Innovation Technical and Artistic Supervision: Nao Tokui (Qosmo) AI System Development: Ryosuke Nakajima (Qosmo) Technical Suppor : Bogdan Teleaga (Qosmo) Design: Naoki Ise (Qosmo), Miki Tetsuka (Qosmo) Sound Effect: Haruma Tasaki (Qosmo) Project Management: Momoko Aoyagi (Qosmo)