社員インタビュー(シニアデザイナー 伊勢尚生)

AI研究者、エンジニア、アーティスト、デザイナーなど、カルチャーの領域を横断するインターナショナルなメンバーが集まるQosmo。私たちは、技術的なスキルに加えて、“文化”に対する強い好奇心と探究心を大切にしています。 Qosmoで働くメンバーはどのような経緯でジョインすることになったのでしょうか。入社の経緯から大学で学んでいた領域や、個人の興味、携わっているプロジェクトまでをインタビュー形式で聞いてみました。第四弾はシニアデザイナーの伊勢尚生さんです。

IMG 1457

Qosmo:伊勢尚生 86年生まれ、20年入社。 ポジション:シニアデザイナー

最初に自己紹介をお願いします。

伊勢尚生と申します。多摩美術大学の情報デザイン学科メディア芸術コースでメディアアートを学びました。同コースで大学院まで進み、途中ベルリン芸術大学のヨアヒム・ザウター教授のニューメディアアート&デザインコースに交換留学で半年ほど在籍しました。

伊勢さんは元々デザインを学んでいたわけではなく、メディアアートを勉強されているんですね。

高校三年生の頃は無難に人気のあるグラフィックデザイン学科志望だったのたのですが、そこは落ちてしまって…。けどそんなにこだわりもなく、幾何学的な構成を用いたデザインが好きだったので、コンピュータを用いたデザインに関連する情報デザイン学科も面白そうだなと思いました。この学科には情報デザインコースとメディア芸術コースがあって、アートはまったく無知だったのですが、直感的に楽しそうと感じたメディア芸術コースに進みました。なので在学中は、音響パフォーマンスとか、インスタレーションを発表したり、あとProcessingやopenFrameworksでプログラミングをして映像を作ったりしていましたね。

伊勢さんはどんな学生でしたか? あまりデザインはしていませんでしたが、タイポグラフィには興味があって、デザイン誌のアイデアを読んたりしていました。ただ、高校まで受けていた授業と比べ、大学での授業が楽しかったので、メインの研究室の授業以外にも単位に関係なく大量に授業を受けていました。全然ついていけなかったですがヲノサトルさん(音楽家/多摩美術大学教授)の音楽理論や、松井みどりさん(美術評論家)のミニマルアートの授業をお手伝いしたり、國分功一郎さん(哲学者)のスピノザ哲学の授業に潜りこんだり。どっちかというといろんなものに興味があってといった感じでした。また、大学院でベルリンに行った時に冊子をデザインする機会がありました。自分の作品を作る時って、作品キャプションとかハンドアウト的なものも自分で作るんですよね。なので、そういうところから徐々にデザインをしていくみたいな感じでした。

学部の頃に基礎的なデザインの勉強をされていたわけではないんですね。 特にそういったことはなく、本当に見よう見まねでやってましたね。ただ、ベルリンに留学した時に、書店を回ってヨーロッパのタイポグラフィにすごく影響を受けました。いまだにあちらの情報をチェックしています。自分がアート作品に関係したデザインから始まっているので、大衆向けではないけれど実験的であったり、アートのコンテクストがわかってる人向けのデザインだったり。特にそういったところに興味がありました。先端的なデザインとか。なので、今、QosmoでAIを扱ったグラフィックデザインを探求しているのは、ポジション的にも当時から興味関心はあまり変わっていないのかなと思っています。

Qosmoはどのようにして知られたんですか? 山口情報芸術センター[YCAM]のインハウスデザイナーで働いていた時に、徳井さん(弊社代表)のAI DJのプロジェクトでご一緒しました。あと、堂園翔矢さん(コンピュテーショナル・デザイナー/プログラマー、2016年〜22年までQosmo所属)も友人だったこともあり、AIを扱って作品作っている会社ということは知ってました。また、大学のとき、久保田晃弘さん(アーティスト/研究者/工学博士)と三上晴子さん(美術家)のクラスにいたんですけど徳井さんが、池上高志さん(東京大学大学院教授)と一緒にレクチャーのゲストで来られて。SONASPHEREっていう作品がすごく有名で、徳井さんのことは有名人として知っていました(笑)

その後、Qosmoに入った経緯を教えてください。 これまでサイネージとかプリントメディアとかを扱うことが多かったので、もうちょっとジェネラティブ、コンピューテーショナルだったり、コンピュータの特性を活かしたようなデザインが展開できるのではないかと思いました。AIも最初は未知でよくわからなかったのですが、特に中嶋亮介さん(弊社インタラクティブAIエンジニア)の世代になると、映像を最初見せてもらった時は、もう見たことないものを見た感じで(笑)。ただ、日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)の企画展「AIと共創するグラフィックデザイン」などにもQosmoの作品が展示されたりしていて、グラフィックデザインに対する興味なども徳井さんのところではあるんだろうなと思い入社を決めました。

現在の仕事内容を教えてください。 ひとつはプログラマーと共同でヴィジュアル制作をしています。たとえば徳井さんが連載を行っているWIREDでAIを使った先端的かつ実験的なビジュアル制作を中嶋さんと共同で行っています。次に企画・ディレクションだと、毎年Qosmoでお送りしているGreetingや、映像制作で撮影に立ち会うこともあります。また通年でQosmoのウェブ運用や管理、SNSでの発信など社内のウェブマーケティング全般を統括しています。

image

WIRED連載第1弾「生成AIの生成性(Generativity)」でのキービジュアル。伊勢と中嶋が共同で担当している

230922

WIRED連載第2弾「創造性の列島改造論と大航海時代」でのキービジュアル

これまでに印象に残っているプロジェクトを教えてください。 また、これはプロジェクトに入るかわからないのですが、グラフィックデザイン誌のアイデア(404号 特集「AIとの共創」)の監修に携わり、掲載内容の提案や、「AIと共創するグラフィックデザイン」展の企画&ディレクターをされていたグラフィックデザイナーの永原康史さん、アーティストのScott Allenさんとの座談会への参加などとても刺激的な経験となりました。デザイナーとしてどのようにAIと携わっていくべきか、より深く考えるきっかけとなったと思います。 また監修だけではなくデザイナーとして、さらに表紙も担当させてもらえました。表紙画像は生成画のコラージュなのですが、AIの力を借りてコーディングしました。プログラミングの知識はいらないとは思いませんが、苦手な部分は補ってもらい、制作するという経験ができました。学生時代から愛読していた雑誌だったので、とても光栄でした。

DSC00012-2

アイデアの表紙デザインは、中嶋が画像を生成し、伊勢が生成された画像でコラージュを行った

また1番最初が、Neural BeatboxというAIがヒューマンビートボックスを生成するWebサイトのプロジェクトで、これも特に印象に残っています。コロナ禍ということもあり、完全リモートでプロジェクトを進めるというのも初めてでしたし、しばらくウェブメディアから遠ざかっていたので、久しぶりアプリケーションのデザインをやった感じでした。サウンドも使ってデザインしていく作業がまだ慣れていないこともありましたが、とても刺激的なやりとりでしたね。フロントエンド・ディベロッパーのRobin Jungers(2017年〜22年までQosmo所属)と一緒にコラボレーションできたことも大きかったです。フロントエンド・デベロッパーはビジュアルデザインの知識も多くあり、コードを書いて実装するだけじゃなく、デザイン的なところも一緒に提案してくれるので、こうしたやりとりを通じてデザインしていくプロセスがこれまでなかったこともあり、とても良い経験でした。

Neural Beatbox for Multi-Session (2020)

デザインをされる上で大切にされていることなどありますか? これがAIでしかできないことなのかどうかはしっかり考えるようにしています。基本的には何かを依頼されて作るというのがデザインの一般的なプロセスになってくるかと思いますが、内容を踏まえつつ、ただその中でも遊び心を持たせるようにしています。そういうものがデザインに内包されている方が、結果いいものになることが多い気がしますね。また、デザインに限ったことではないのですが、Qosmoでは、自分で調べて仮説を立ててではないですが、提案する姿勢を大切にしています。なので、プログラミングができるとかそういったことではなく、ディレクションができることや、これがしたいなどそうした意思を持つことがスキルより大切になってくると思います。もちろんスキルはあるにこしたことはないですが、そうした部分はうまくAIの力を使ってカバーできるところではないかなと思っています(笑)

A930F1FA-369C-444A-AA35-90B7970AF332-570-00000002435A8D0E-2

毎年、年始めにお送りしているGreeting。2024年は、生成AIとバリア・グリッド・アニメーションの手法を組み合せ、目の錯覚を利用した新年のご挨拶

最近の興味関心があれば教えてください。

音楽制作に興味があります。Neutone以外にも様々な音楽制作ツールがあるので調べながらやってみたいと思っています。あと、ずっとコンピューターの前に座っているので体を動かすためにスイミングをはじめました(笑)

実際にQosmoで働いてみてどうですか?

カジュアルな雰囲気で堅苦しくなく、ユーモアがあるチームに囲まれています。インターンの人や外部のコラボレーターも多いので、オープンな環境にいると感じています。また、娘が生まれたタイミングで移住し、今は月一くらいの頻度でオフィスに通っています。プロジェクトがきちんと動いていれば問題ないので、仕事と育児の両立など、こうしたことにとても理解のある職場ですね。オフィスにいく機会は少ないですが、会社の社外活動にも積極的に参加するなどしてコミュニケーションをとっています。流動的に、移動することがあっても働ける職場環境がありますね。

IMG 0627

年始はチームでオフィス近くの神社へ参拝に。Qosmo恒例行事の一つ

最後にQosmoに興味を持ってくださった方にメッセージをお願いします。

AIはもしかしたら難しいと感じる人はいるかもしれませんが、アートに興味があって、ちょっとでもテクノロジーに興味があればいいと思います。まずそれに対する興味があれば知識やスキルなどは後からついてくると思います!

Qosmoスタッフ募集中 現在、私たちはこのような価値観を一緒に共有できる仲間を探しています。複数の職種を募集していますので、ご興味ある方からのご応募をお待ちしています。 詳細はキャリアページよりご確認の上、お問い合わせください。

ご依頼・ご相談などはこちらよりお問い合わせください

お問い合わせ